1970年代の建築からインスピレーションを受けた湖畔のログキャビン、ホンカ「ランタマ」
フィンランド国内のインフルエンサーで建築家のアンニカ・メダーは、ホンカと共同で、1970年代に建てられたサマーコテージに着想を得たホンカ「ランタマ」をデザインしました。プロジェクトの一環として、アンニカは1970年代に流行したキャビンのレイアウトを研究し、当時に良く建てられていたキャビンを参考にしています。この記事では、アンニカが最もインスピレーションを受けた70年代のキャビンデザインの3つの特徴とともに実際に建てられたアンニカの「ランタマ」第一棟の写真も紹介します。現在「ランタマ」はホンカの人気モデルの一つとなりました。
1.自然とのつながり、巧みな空間設計、光あふれる空間 -ラグジュアリーなキャビン
1970年代に建てられた家族のサマーコテージを手放すことになり、アンニカは幼いころからあこがれていたログ・キャビンをホンカで建てることにしました。その時代の特徴として、コテージには本当に必要なものしか備えられていませんでした。自然の中でくつろぐことこそが本当の贅沢と考えられていたのです。1970年代のキャビン建築の特徴は、大きな窓―明るさ―、なだらかな切妻屋根、入念に設計された間取りです。コストパフォーマンスの良い「ランタマ」のデザインも、この特徴に基づいています。
「コテージでの生活は、都会での生活とは異なります。コテージで過ごすときに最も重要なのは、自然、湖の風景、薪ストーブで火を楽しむことです。これらすべてが、リラックスするための完璧な雰囲気をつくるのです。」
アンニカ・メダー
「低い切妻屋根と大きい窓のおかげで、「ランタマ」の室内にも自然が存在しているように感じられます。「ランタマ」は、1970年代の精神とモダンが融合した、コンパクトなサマーコテージです。このモデルは、工業生産とデザインがうまく結びついて完成しました。」
ホンカのチーフ・アーキテクト、アンネ・マキネン
1970年代のキャビン建築を研究していたアンニカは、ヘイッキとカイヤ・シレン*が設計したミニマルなログキャビンにインスピレーションを受けました。壁はほとんどなく、窓だけがあるようなキャビンです。クリスティアン・グリクセン*が設計した流線型の簡素なサマーコテージも、居心地のよいインテリアで強い印象を受けています。もうひとつのお気に入りは、ブリュッセル万国博覧会のためにレイマ・ピエティラ*がデザインした、輸出市場向けのかなり細いログでできた斬新で遊び心のあるサウナ建築でした。
*いずれもフィンランドの著名な建築家
2. 広いラウンジのためのコンパクトな間取り
アンニカは、1920年代から1970年代までの標準的なキャビンのモデルや間取りを研究しました。その際に考えていたのは、時代を超越したキャビンとは?ということでした。アンニカが探していたいくつかの要素の中で、1970年代のレイアウトが最も優れているように思えました。1970年代は、キッチン、ダイニング、リビングを大きな共有スペースにまとめる一方で、寝室やその他の部屋はコンパクトにするのが流行でした。57平方メートルの「ランタマ」には、薪ストーブのあるリビングルーム、オープンキッチン、2つの小さな寝室、屋根付きのテラス、洗面所付きのこじんまりとしたサウナがあります。キャビンは3人家族用の間取りです。
ホンカの建築家は、「ランタマ」78平方メートルのバージョンも設計しており、トイレ、シャワー、少し広めの寝室に変えています。
「『ランタマ』は、自然に近い癒しの環境を提供するラグジュアリーなログハウスです。機能的で、環境にやさしく、費用対効果が高く、シンプルで控えめで、いい意味で質素でもあります。」
アンニカ・メダー
3. 自然素材とシンプルなインテリア
ヘルシンキのアールト大学でインテリア建築を学んだアンニカは、飽きの来ないタイムレスなデザインに特に興味を持っていました。「ランタマ」で使われているのは、木、ウール、コットン、リネンといった天然素材がほとんどです。アンニカが建築材料としてログに特に惹かれたのは、寿命が非常に長く、炭素を貯蔵する能力があるため、サステナブルな建材だからです。アンニカの「ランタマ」は、時間が経つにつれて美しく変化し、キャビンを居心地の良い空間とするため、無垢の木肌を最大限生かしています。
1970年代は、室内の家具にも反映されています。アンニカが読んだフィンランドのサマーコテージの歴史に関する本には、シンプルでリサイクルされた、ハンドメイドの家具について書かれていました。アンニカの「ランタマ」には、中古の美しい家具が多く使われています。リビングルームのソファベッドは、キャビンを建てるときに余った木材でつくりました。アンニカの子どもの時に過ごしたサマーコテージのように、収納も当時の思い出が反映されています。ベッド下の引き出しには衣類を収納し、棚には必要なキッチン用品だけを収納し、チェストには時間を過ごすためのゲームなどを収納しています。
「ランタマ」は日本の建築基準にあわせたモデルもあります。
日本の建築基準にあわせたモディファイ版ランタマ