フィンランドの夏とリノベーション: 古い家を魅力的にカスタマイズする方法
フィンランドの春夏はリノベーションに最適な季節です。長い冬が終わり、雪が解けると共にやってくる短い春は、多くの家庭で改修や間取りチェンジのプロジェクトが始まる時期です。そして明るい時間が多い夏は、部屋の増築、ウッドテラス設置、ドアや窓の取り換え、煙突の修繕、外壁の塗装など様々な外部の工事に最も適したシーズンです。
雪に埋もれる冬の期間を利用してしっかり計画を立て準備を進めることで、春にスムーズに作業を開始できます。春にフィンランド人がいっせいに家のリノベーションを始めるように見えるのはそのせいかも知れません。多くのフィンランド人は工事業者に頼まずDIYするので、いつもホームセンタ―は建材を物色する人でいっぱいです。
フィンランドでは家の改修、リノベーションのことをRemontti(レモンッティ)と呼びます。レモンッティに関する雑誌やテレビ番組は非常に多く、人々の関心の高さが伺えます。古い学校を買い取って住まいにする家族や、100年の歴史を持つ古いログハウスを購入してカスタマイズする家族もいます。歴史あるものを大切にするフィンランド人らしさが現れていますね。
フィンランド人同士の会話にも、レモンッティの話は頻繁に出てきます。「元気?最近は何しているの?」「風呂場の改修だよ。壁をはがしたら柱が腐食していたから、防水工事からやり直しでもう大変。ついでにサウナも新しくする予定。」DIY大国のフィンランドでは、家の修繕はごく当たり前の話。大変そうな話が楽しそうに聞こえるのは、大工仕事を気軽にこなせるからなのかも知れません。
リノベーションが終わって新しい部屋や庭が完成すると、興味しんしんで見守っていたご近所や重たい建材を一緒に運んでくれた友人などを招いて、シャンパンを開けてお披露目パーティーをすることもよくあります。リノベーション工事は多くの人の興味の対象。ときに近所や友人とのイベントと化すこともあるのです。
フィンランド式リノベーションの良い例として、我が家を少しご紹介します。南フィンランドに位置する築60年の木造住宅ですが、古くてあちこち問題をかかえているうえに現代の生活に少々合わない部分もあります。そこで、10年前から工事を毎年少しずつ進めています。最初に倉庫と化していたビルトインガレージをエントランスとクローゼット、トイレに変えました。給排水、電気工事以外はすべて自分たちで施工しています。
次の年には寝室とキッチンを一つながりの大きなLDKに改装し、キッチンはコンクリート天板のアイランドキッチンにしました。さらに数年後にはサウナやバスルームを新しく作り替え、今年は窓をより断熱性の高い三重サッシに入れ替えました。来年は外壁の塗り直しを予定しています。我が家のリノベーションはまだまだ続きそうです。
リノベーション工事では、前からある古い部分を整理したり撤去する手間が必要ですが、その過程で面白い発見をすることもあります。我が家では古い家具をどかしたら床下収納庫を見つけたり、壁の仕上げ材をはがしたら古いレンガの壁がでてきたりしました。レンガの壁はアクセントとして生かし、床下収納庫はワインセラーに利用することにしました。
古いガレージドアは青く塗装してリビングの引き戸にし、屋根裏から見つけた古い木製のスキーは壁に飾りました。その結果我が家らしい空間になり、家族はとても気に入っています。
リノベーション工事には問題解決のための忍耐やそれなりの時間と予算が必要。根気のいる作業ですが、住まいをアップデートすることでより機能的で快適な住空間となり、家が長持ちします。何より、自分らしい空間で毎日暮らせることの幸せは大きいです。
家をカスタマイズして、あなた自身のスタイルに合わせた快適な空間を作り出すことは、生活の充実度を高める素晴らしい方法です。フィンランドのリノベーション文化を参考に、自分だけのスペースを作り上げてみませんか?家の不具合は、リノベーションのチャンス。一工夫して新しく生まれ変わらせることで、長い目で見て大きな満足感を得られますよ!
Text by Asako Hashimoto